2024.7.24
お知らせ

メルカリ、第4回「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」を実施

〜外部有識者とともに直近のメルカリのマーケットプレイス運営を検証〜

株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は2024年6月19日、メルカリの「マーケットプレイスの基本原則」(以下、基本原則)の運用を検証する第4回「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」を実施いたしましたので議事概要と併せてお知らせいたします。

「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」は、「安全であること」、「信頼できること」、「人道的であること」という3つの基本原則に関する取り組みについて外部有識者と振り返ることを通じ、よりよいマーケットプレイスの構築に必要なアクションを検討することを目的に、2021年6月より継続的に実施しております。

■「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」 参加外部有識者一覧(敬称略)

  • 工藤郁子(大阪大学 社会技術共創研究センター 特任准教授)
  • 坂井豊貴(慶應義塾大学 経済学部 教授)
  • さっこ(インスタグラマー)
  • 山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授)

    ※メルカリからの主な参加者
  • 長利 一心(株式会社メルカリ 執行役員 COO Marketplace 兼 VP of Trust & Safety Marketplace
  • 吉川 徳明(株式会社メルカリ 執行役員 VP of Public Policy

メルカリは、今後も基本原則に基づき、誰もが安心して参加できる、多様で自由なマーケットプレイスを目指してまいります。

※参加者の役職は開催日時点のものです。
※「マーケットプレイスの基本原則」の全文・詳細についてはこちらをご覧ください。
URL: http://about.mercari.com/principles/
※過去の「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」についてはこちらをご覧ください。
第1回: https://about.mercari.com/press/news/articles/20210720_advisoryboard/
第2回: https://about.mercari.com/press/news/articles/20220422_advisoryboard/
第3回: https://about.mercari.com/press/news/articles/20230407_advisoryboard/

 

■「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」 第4回 概要

  • 実施日:2024年6月19日
  • 議題:
    • マーケットプレイスの運営の振り返り
    • 基本原則に照らして検討をしたときに判断に迷う出品物への対応について
    • 行政機関からの現物支給品の出品への対応について
    • 基本原則の見直し

 

■議事概要

アドバイザリーボードでは、メルカリ側からこの1年間のマーケットプレイス運営に関わる取り組みや出来事を紹介した後、外部有識者とともにマーケットプレイスの運営のあり方を評価・議論しました。今回は、以下の2つを論点とし、それぞれの論点に関連した具体的な商品例や対応例を示しながら議論しました。

  1. 基本原則に照らして検討をしたときに判断に迷う出品物への対応について
    • 売買自体は法令で禁止されていないものの、その商品の主たる用途で用いた場合に違法性が生じるものについて取引を禁止すべきか(主たる用途で用いない場合には違法性がない。)
    • 商品の使用や取引を通じて身体・生命への危害が加わる可能性があるものについて、危害の程度や可能性に幅がある中で、どのように考えるべきか
  2. 行政機関からの現物支給品の出品への対応について
    • メルカリの対応の振り返り
    • 今後も起こり得る行政機関からの現物支給品の出品にどう対応すべきか
    • 不要品が(有償・無償問わず)譲渡されることが当たり前になる社会において、現金給付・現物支給はどのようにあるべきか

各論点に関して、有識者から以下の議論がありました。

1.基本原則に照らして検討をしたときに判断に迷う出品物への対応について

  • 主たる用途で用いた場合に違法あるいは危険である商品は、基本原則に照らして出品を禁止すべきという意見でおおむね一致しました。また、主たる用途で用いた場合に違法にならない事がある場合には出品が許容されうるという意見でおおむね一致しました。
  • 具体的には以下の意見が出されました。
    • 主たる用途で用いた場合に違法となる商品は、仮に「観賞用です」などと記載され、違法ではない用途のために売られていたとしても、基本原則に照らして出品を禁止にすべき。違法ではない用途で使われることの真偽はメルカリでは判断できない。
    • 商品説明の記載に偽りがあり、違法・危険な商品であることがわかれば削除すべきだが、メルカリが逐一検証することまでは求められないのではないか。
    • 主たる用途で用いた場合に、違法となる場合と違法にならない場合がある商品については、基本原則からは出品が許容される。使い方の問題であり、啓発などで対応できる部分もあるだろう。
    • 商品の出品可否は、可能な限り基本原則に基づく理屈で判断すべきだが、理屈で決めきれないことは、議論と多数決により決めることを制度的に導入してもよいのではないか。
    • 基本原則に基づいて出品が禁止されるものを、他の観点で許容することはないと理解している。
    • 企業として基本原則以外の要件に基づく経営判断により出品を禁止することは当然あり得る。ただしそうした経営判断と基本原則に基づく判断は、明確に区別すべき。
    • 基本原則以外の理由で出品を禁止したものは、他のいかなる原理で禁止したのか社内で明確にすべき。
  • そのほか、主に以下の議論がありました。
    • 一般的に、ルール策定後、長期にわたって運用していく中では、ルールの硬直化やルールに対する思考停止・教条主義的姿勢が生じることが懸念される。しかし、現時点のメルカリでは、大多数の商品が基本原則に基づき処理され、少数の物がエスカレーションされて基本原則に立ち返りつつ実質的な議論がされるという「健全な悩み方」をする運用がされているという印象を持った。
    • ルールの議論にあたって、慎重に判断するため、要件を書き出して、その解釈・適用をより明晰にしたほうがいいという課題はあるかもしれない。また、結果として、基本原則をオーバーレイしすぎている場合はそれが妥当かと自問する視点も持てるとよい。そうした事象が多ければ、基本原則自体の見直しの検討が必要になるだろう。
    • 利用者の立場からすると、購入者としては出品されているものはすべて違法でなく、また、安全なものであって欲しい。また、出品者としても、知らずに違法な出品をしてしまうことは避けたい。そのため、メルカリ側で違法性が制御できないものは一律禁止にするという考えもあり得るのではないか。
    • 理想的な状況においては、用途によっては違法であるということをメルカリの出品画面において表示するなどの情報提供や注意喚起をすることで、利用者が適切な意思決定をできる。制御できない商品の一律の出品禁止は過剰な規制となる可能性がある。もちろん理想論・理念型であり、実装が難しい場合もあるとは承知しているが、一律禁止は最終手段と位置づけ、まずは情報提供などの選択肢を検討する方が、基本原則の考え方に沿っているのではないか。
    • 利用者としては、出品してよいもの・いけないもの、法令で引っかかることを端的に示してほしい。利用者の安心・安全のために有識者を交えて議論していることやメルカリ社内でのルールの議論が利用者には伝わってこない。水面下で行われている議論について、かみ砕いたわかりやすい表現にした上で利用者に伝えていくべき。

2.行政機関からの現物支給品の出品への対応について

  • 基本原則に照らして、行政機関からの現物支給品であることだけをもって出品を禁止すべき商品とは考えられないという意見でおおむね一致しました。
  • 具体的には以下のような意見が出されました。
    • 行政機関からの現物支給品というだけでは、メルカリで出品されることで誰かに危害を及ぼすものではない。したがって、基本原則に照らして出品を制限すべき商品ではない。
    • 行政機関による生活困窮者の支援施策としては、現物支給よりも現金の配布の方が効率的。行政がとらえ切れなかった生活困窮者のニーズをメルカリが受け止めたことで、行政の非効率性を補ったとも言える。
    • 自らも、実際に現物支給品をもらった際、苦手なものが入っていたことがあった。捨てるにももったいなく、その際は困った経験をした。
    • 一方で、現金給付だと、酒やタバコといった嗜好品の購入などに使われるという社会的批判を行政機関が受ける場合もあることに留意する必要がある。
    • 転売禁止と明記されているものを出品するのは出品者のモラルの問題だろう。
    • 行政が上の立場で民間企業が下の立場、というわけでは必ずしもない。行政が転売禁止と強制力なく言ったとしても、必ずしも売れないようにする必要はないだろう。ただし、命にかかわるものなど、場合にもよるだろう。

基本原則の見直しについて

  • 現時点では基本原則そのものの見直しまでは不要との意見で一致しました。
  • メルカリの越境取引が拡大する中で、国際的なマーケットプレイスを目指す観点からの基本原則の見直しの必要性についても議論され、次のような意見が出されました。
    • 基本原則の内容には相当程度の普遍性がある。学術上は諸説あるが、危害原理とは基本的に普遍的なもので、原則として維持可能と考える。
    • 基本原則が他国の文化・制度に対応できないケースが今後増えたならば、その際は、基本原則を変更するのではなく、基本原則に各国向けの補足を加えてはどうか。
    • 国によって法が異なることで、利用者が不明瞭と感じて、説明する必要が生じる場面が増えるだろう。「メルカリShops」においては出店者教育も必要になるのではないか。
    • 利用者の立場からはわかりやすさが重要。安心安全をどのように担保しているか具体例を交えて提示してもらいたい。出品者・購入者のトラブル対応の際にどちらの言い分が正しいか判断するための仕組みとルールのブラッシュアップに期待したい。
    • 世界的な潮流を鑑みると、現行の取引に関する内容を中心とした基本原則に加えて、プライバシー保護やコミュニケーションに関する基本原則を別途追加してもよいのではないか。