〜追加会議を開催、Principles(原理・原則)の公開は11月下旬を予定〜
フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は、第三回「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」(座長:慶應義塾大学・大学院商学研究科 准教授/ケンブリッジ大学訪問教授 梅津光弘氏)を2020年9月28日に開催いたしましたので、その概要を公開いたします。
なお、本有識者会議は新たに1〜2回の追加会議の開催が決定しており、最終的なPrinciples(原理・原則)の公開は2020年11月下旬を予定しています。
■「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」第三回 概要
- 日時:2020年9月28日(月)14:30~16:30
- 場所:株式会社メルカリ 東京オフィス会議室およびオンライン
- 議題:
- 事前配布されたPrinciples(原理・原則)草案に対する有識者会議メンバー・メルカリからのフィードバックの共有
- フィードバックを踏まえたPrinciples修正案と論点の提示・議論
- 今後のスケジュール
- 出席者:
- 梅津光弘委員(座長/慶應義塾大学・大学院商学研究科 准教授/ケンブリッジ大学訪問教授)
- 磯貝友紀委員(PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス テクニカル・リード/ PwCあらた有限責任監査法人 パートナー)
- 大木良子委員(法政大学 経営学部 教授)
- 軍地彩弓委員(編集者/ファッション・クリエイティブ・ディレクター)
- 坂井豊貴委員(慶應義塾大学 経済学部 教授)
- ハヤカワ五味委員(株式会社ウツワ代表取締役)
- 山口真一委員(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授)
- 田面木宏尚委員(株式会社メルカリ 取締役 メルカリジャパンCEO)
※委員プロフィール等詳細はこちらをご覧ください。
※「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」第一回議事概要はこちらを、第二回議事概要はこちらをご覧ください。
■ 議事概要
- 事務局から、事前配布された「Principles(原理・原則、以下Principles)草案に対する有識者会議メンバー・メルカリからのフィードバックの共有を行い、「フィードバックを踏まえたPrinciples修正案と論点」を提示し、自由討議を行った。
- なお、Principles草案としてメルカリから提示した項目は以下のとおり。 ※項目は2020年9月26日時点で作成した草案の一部であり、第三回有識者会議の結果を踏まえて、今後修正予定のものです。
1) どんな人が参加できるマーケットプレイスか
- Diverse&Inclusive/多様性
- 売りたい、買いたいと思う全ての人が、インターネットを通じて場所・時間を問わず、属性や立場にとらわれることなく参加できる
- Trust-based/信頼性
- 取引相手に嘘をついたり、騙したりせず、信頼のもとに、正直かつ誠実に取引できる人が参加できる
2)どんな取引ができるマーケットプレイスか
- Free/自由
- 売りたい人が売りたいものを、売りたい価格で販売できる。また、買いたい人が買いたいものを、買いたい価格で購入できる
- これによって、最も経済効率的に需給をマッチングすることができるマーケットプレイスを実現する
- Safe&Secure/安心・安全
- 「安心・安全な取引環境」を最優先とする法に反する行為はもちろん、法の定めによらずとも、人の生命や身体の安全を確保できないような取引については、規制など何かしらの対処を行う
- Ethical/倫理性・人道性
- 取引の是非について意見が分かれる場合は、「自由な取引」を実現することを原則として、様々な背景や理由で参加されている方々の立場を尊重し、できる限り多くの角度・立場から取引の是非について議論をした上で、倫理性・人道性を踏まえて都度判断を行う
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- お金を介して市場で売買されることが倫理的・人道的に許容されるべきではない取引
- 大規模な自然災害やパンデミック、戦争などの有事において国などの公的機関がステートチェンジの宣言を発令している中で、身体・生命の保護や健康の維持に関わる必需品でありながら供給が上限に達しているものの取引
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3) 誰によってどのように運営されるマーケットプレイスか
- Human✕Technology :人間とテクノロジーの力を最大限にを活用する
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- 専用スタッフによる24時間365日の体制、AIを活用した監視システムの構築などにより、トラブルの未然防止を推進する
- さらに、マーケットプレイスに参加する人同士で相互に評価をしたり、違反行為に対して通報できる仕組みを構築することよって、参加する人が取引を信用を積み重ねることができ、結果としてマーケットプレイス全体の信頼を高めていく
- 提示した論点は以下のとおり。主にPrinciples草案における大項目「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」の具体的な項目、及び「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、議論した。
- 「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」について、「第三者の生命・身体に危害を加える」と「第三者の犯罪行為、違反行為を引き起こす可能性がある」は近しい概念であるが、分けて記載するべきか
- 違法なものは危害を加えるものもあり、危害を加えるものが違法行為になるケースが多い
- ただ、これは判断チャート(第二回議事概要参照)にすると解決するのかもしれない
- まずは違法行為になるならNG、違法でなくても危害を加えるようなものはNG等
- 「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」において、非倫理的・非人道的という部分について「メルカリが判断」としているが、それ以上の詳細の規制基準を記載する必要はないか
- 「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、国など公的機関のステートチェンジ(例:緊急事態宣言、有事における非常事態発令など)を前提とするべきか
- 「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、「供給が上限に達している」状態をどのように判断するべきか
【議事サマリ】
- Principles修正案に関する議論:
- (論点1)「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」について、「第三者の生命・身体に危害を加える」と「第三者の犯罪行為、違反行為を引き起こす可能性がある」は近しい概念であるが、分けて記載するべきか
- 「第三者の犯罪行為、違法行為を引き起こす可能性がある」については、対象が広くなりすぎるので、「第三者の犯罪行為、違法行為を引き起こす可能性が高い」とした方が良いとの指摘があった。
- (論点1)「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」について、「第三者の生命・身体に危害を加える」と「第三者の犯罪行為、違反行為を引き起こす可能性がある」は近しい概念であるが、分けて記載するべきか
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- (論点2)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」において、非倫理的・非人道的という部分について「メルカリが判断」としているが、それ以上の詳細の規制基準を記載する必要はないか
- 草案では「倫理性・人道性を踏まえて(メルカリが)都度判断」とされているが、運営側の裁量が広いことを嫌う利用者もいる。そうした感情を刺激しないために、説明文の工夫、及び事例集のようなものを提示することが一案。
- また、こうした説明を示すことは、メルカリを守ることにもつながる。
- (論点2)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」において、非倫理的・非人道的という部分について「メルカリが判断」としているが、それ以上の詳細の規制基準を記載する必要はないか
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- (論点3)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、国など公的機関のステートチェンジ(例:緊急事態宣言、有事における非常事態発令など)を前提とするべきか
- 各有識者とも、以下のとおり国などのステートチェンジの発令によらずにメルカリとして自主的に判断するべきであるとの意見で一致した。
- ステートチェンジの発令を契機とすると、メルカリは国なのどのステートチェンジの発令がない限り動かないとも捉えられかねない。メルカリ自身が基準を設けて判断したほうが企業姿勢としても良いのではないか。
- 今後のグローバル展開を考えると、各国のルールにおもねらないこともメルカリの良さになるだろう。
- 国のステートチェンジを全く考慮しないのではなく、国などの公的機関と密にコミュニケーションを図り連携しつつ、メルカリが主体的に意思決定するということではないか。メルカリが責任主体となることで健全な運営も期待される。
- 「国などの公的機関がステートチェンジを発令している中で」とあるが、この文言を外すとともに、この文章の後半と前半の順番を入れ替え、「生命・身体の保護や健康の維持に関わる必需品で、著しく生産が逼迫していると思われるものについては、国などの公的機関と密接に情報収集しながら、適切な取引を導く」などとするのが良い。
- 各有識者とも、以下のとおり国などのステートチェンジの発令によらずにメルカリとして自主的に判断するべきであるとの意見で一致した。
- (論点3)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、国など公的機関のステートチェンジ(例:緊急事態宣言、有事における非常事態発令など)を前提とするべきか
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- 関連して、「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」の下に、有事における必需品の取引の規制や国のステートチェンジを受けた対応が位置づけられることに違和感があるとして、以下の議論の結果、有事における必需品の取引は、「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」の項目内「2)-2. Safe&Secure :安心・安全」に位置づけられることとなった。
- 倫理に関する部分に国家権力の行使の話が出てくることに違和感がある。「国などのステートチェンジ」を記載するのであれば、安心・安全の文脈に位置づけてはどうか。
- Ethicalの項目に入れるか、Safe&Secureの項目に入れるかは、メルカリのスタンスを示すことにもなる。例えばマスクの取引について、メルカリはマスク転売が倫理に反しているから取り締まるのか、あるいは正の外部性により過少供給の問題をより促進してしまう可能性がある(マスクが本来望ましい水準よりも少ない量しか流通しない問題がより促進される)ため取り締まるのかということを示すことになる。この有識者会議では後者の見方をしており、その点でも安心・安全の文脈に位置づけてよいだろう
- 関連して、「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」の下に、有事における必需品の取引の規制や国のステートチェンジを受けた対応が位置づけられることに違和感があるとして、以下の議論の結果、有事における必需品の取引は、「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか」の項目内「2)-2. Safe&Secure :安心・安全」に位置づけられることとなった。
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- (論点4)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、「供給が上限に達している」状態をどのように判断するべきか
- 供給が上限に達していることを判断することについて、以下の議論があり、「店頭での品薄」を根拠として取引を制限する必要がないこと、言葉の表現を「著しく供給が逼迫している」と修正し、実際の判断についてはその物資を所管する公的機関と情報交換を行いながら判断をするのがよいとの結論に至った。
- 「店頭にない」という状態は地域によっても差があり、すぐに解決する場合もある。メルカリが常に供給の動向を把握することはハードルが高い。
- 店頭での品薄を判断基準にすべきでないという意見は他にも複数出された。
- メルカリを挟むことで消費者の手元に届くまでの時間が非常に伸びるケースにおいて、その影響が解消されないくらいの生産状況である場合に「供給が上限に達している」と判断してはどうか。
- 価格の急激な変化やいろいろな状況を踏まえた複合的な判断が求められる。
- 他方で、価格をシグナルとするとリアクティブになり、対応が遅れることも懸念される。
- メルカリが独自に判断をすることは難しいため、人の生命・身体の保護や健康の維持に関わるものは、公的機関とも十分コミュニケーションをとりながら適切に対応していく、というようにしてはどうか。
- 「店頭にない」という状態は地域によっても差があり、すぐに解決する場合もある。メルカリが常に供給の動向を把握することはハードルが高い。
- また、「供給が上限に達している」という表現よりも、「著しく生産が逼迫している」あるいは「著しく供給が逼迫している」という表現のほうが適切との指摘があった。
- 供給が上限に達していることを判断することについて、以下の議論があり、「店頭での品薄」を根拠として取引を制限する必要がないこと、言葉の表現を「著しく供給が逼迫している」と修正し、実際の判断についてはその物資を所管する公的機関と情報交換を行いながら判断をするのがよいとの結論に至った。
- (論点4)「2)-3. Ethical/倫理性・人道性」について、「供給が上限に達している」状態をどのように判断するべきか
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- Principles草案の全体構成について
- Principlesだと、メルカリが運営側からお客さまに課す法律のような印象を与えるため、お客さまとメルカリの「約束」としてはどうか、という提案があり、議論がなされた。
- 約束であれば、お客さまを裁くために存在しているルールと受け止められにくく、良い。
- 約束とする際には、マーケットプレイスをお客さまとメルカリでともに作っていくという考えのもとに、お互いの対等な約束とするとなお良い。
- 「約束」とするのであれば、「~を禁止する」「規制するべきだと判断する」といった表現ではなく「コンプライアンスに触るような市場にしないと約束する」、「非人道的なマーケットプレイスにしないような取引を促すことを約束する」といった表現にしてはどうか。
- 結果、今回議論したPrinciplesは、お客さまとメルカリが一緒にマーケットプレイスを創りあげていく上での双方にとっての「約束」と位置づけることとなった。
- その他、項目の順や記載内容について、次の意見があった。
- Principlesの「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか?」について、FreeよりもSafe&Secureが先に来るべきではないか。Freeが先にくると、結局は自由にやりたいのだろうという穿った見方もできてしまう。
- 現状の案は、「1) どんな人が参加できるマーケットプレイスか」という項目にDiverse & Inclusiveが先に記載されてあり、誰かを排除するのではなく、様々な方が参加できるということが前提として表現されているので、特に修正する必要はないのではないか。
- どういった背景・経緯でこのPrinciplesを作るに至ったかを、前文としてまとめておくと理解されやすくなる。
- 前文を通じて、より良いマーケットプレイスを作っていきたいという意思表示ができると良い。
- Principlesに照らして判断されたものを事例集として添付すると、お客さまにとってよりわかりやすくなるとの提案もあった。
- Principlesの「2) どんな取引ができるマーケットプレイスか?」について、FreeよりもSafe&Secureが先に来るべきではないか。Freeが先にくると、結局は自由にやりたいのだろうという穿った見方もできてしまう。
- Principlesだと、メルカリが運営側からお客さまに課す法律のような印象を与えるため、お客さまとメルカリの「約束」としてはどうか、という提案があり、議論がなされた。
- Principles草案の全体構成について
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- 今後の検討課題
- 今後の主な検討課題として、以下のことが示された。
- Principlesを作った際にイメージしていたことと、それを受けて動く現場の担当者との理解に相違が生じないような工夫が必要。
- 循環型社会を目指す観点から、メルカリによる環境に対する外部性を議論しても良いだろう。
- マーケットプレイスに出品している方の信頼度を活用できるようアーキテクチャを工夫することもできるのではないか。
- UIの観点でも、事前に禁止出品物に当たりそうなものであることを知らせて、出品を取り下げる行動を促す仕組みを作ることで、取り締まられているとの感覚を和らげられるのではないか。
- Principlesあるいは約束を制定してもなお判断に困ることがあるだろう。五人委員会などの判断の手続きを決めておくのがよいのではないか。
- 今後の主な検討課題として、以下のことが示された。
- 今後の検討課題
- 今後のスケジュールについて
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- 追加会議の開催(1〜2回)11月上旬〜中旬(予定)
- 第二回会議で実施することが決定した定量調査について、分析結果を踏まえて再度有識者で見直しの必要性がないか議論
- その後、メルカリ社内で最終化に向けて、議論を行う
- Principles(原理・原則)の最終化・公開 11月下旬(予定)
- 追加会議の開催(1〜2回)11月上旬〜中旬(予定)
以上