うち275億円は、使ったことがない化粧品を試すための“トライアル消費”
二次流通市場がもたらす一次流通市場への消費喚起効果は年間205億円
株式会社メルカリ(以下、メルカリ)と株式会社アイスタイル(本社:東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO:吉松 徹郎、証券コード:3660、以下 アイスタイル)は、2020年2月に締結した両社の包括連携協定※1の一環として、化粧品/コスメの二次流通市場がもたらす一次流通市場への影響を明らかにすべく、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授 山口真一氏と「化粧品/コスメの二次流通市場」に関する共同調査を実施しました。
新型コロナウイルス感染症の影響等により、2020年の化粧品出荷額は約1兆4,783億円、前年比13.9%減のマイナス成長となっています。※22021年9月にアイスタイルが実施したアットコスメ会員調査※3によると、71.8%が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で化粧品に関する買い物に変化があったとし、最も多い変化として、72.3%が「店頭での化粧品テスター活用の減少」と回答しました。さらに、90.6%が「サンプルやテスターで試すことができず購入を躊躇した経験がある」と回答するなど、新型コロナウイルス感染症が店頭での試用を主とした化粧品販売にマイナス影響を及ぼしていることを示唆しています。
一方で、アイスタイルの同調査によると、フリマアプリやオークションサイトで化粧品/コスメを購入する理由1位は「安く買いたいから」(65.6%)、2位は「お試し購入」(56.6%)であることがわかりました。「安く買いたいから」という理由は、一次流通市場での購入(新品での購入)に代替する可能性があるものの、「お試し購入」という理由は店頭での化粧品テスター活用を補完し、新品での購入を促進する等、二次流通市場が一次流通市場にプラス影響を与えている可能性があります。
このような背景を受け、今回、メルカリとアイスタイルでは化粧品/コスメの二次流通市場が一次流通市場にもたらす影響について実態を明らかにすべく、調査を実施しました。
※1:株式会社メルカリ プレスリリース「メルカリ、アイスタイルと包括業務提携を締結」(2020年2月)https://about.mercari.com/press/news/articles/20200220_istyle/
※2:出典 経済産業省 「-2020年-生産動態統計年報 化学工業統計編」https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/gaiyo/resourceData/02_kagaku/nenpo/h2dbb2020k.pdf
※3:株式会社アイスタイル プレスリリース「@cosmeにおける二次流通での化粧品購入実態調査」(2021年10月)https://www.istyle.co.jp/news/info/2021/10/1014.html
【結果サマリー】
1. 国内在住15歳~69歳のうち、10.0%が二次流通市場で化粧品/コスメの購入を経験。二次流通市場規模は推計1,555億円
2. 二次流通市場購入者の40.1%が、使ったことがない化粧品を試すための“トライアル消費”を実施。二次流通市場規模1,555億円のうち、275億円がトライアル消費
3. トライアル消費を行う理由1位「店頭や通販サイトなどで新品で買って失敗したくなかったため」2位「通販で買うことが多く、購入前に試したかったため」3位「新型コロナの影響で化粧品・コスメを通販で買うようになり、店頭で試せなくなったため」
4. 二次流通市場がもたらす一次流通市場への消費喚起効果は年間205億円
二次流通市場での「購入」による消費喚起効果は年間52億円、「出品」による消費喚起効果は153億円
5. 二次流通購入者/非購入者における化粧品/コスメの消費意識の差、1位「新しい商品はできるだけ試す」
6. 直近6ヶ月間における一次流通市場での平均購入金額は、トライアル消費実施者が最も高い24,206円で、 二次流通非購入者の約2.6倍
調査概要
【事前調査】
調査時期:2021年9月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国、15歳~69歳、男女、20,000人
留意事項:15歳~69歳 性年代別人口比割付※
※:令和3年8月20日 総務省統計「人口推計」(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202108.pdf)を参照
【本調査】
調査時期:2021年9月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国、15歳~69歳、男女、2,000人
留意事項:直近6ヶ月間、二次流通市場で化粧品/コスメの購入経験がある男女 1,500人
二次流通市場で化粧品/コスメの購入経験はないが、新品での購入経験のある男女 500人
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授
山口真一氏
1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、情報経済論、情報社会のビジネス等。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award貢献賞、組織学会高宮賞、情報通信学会論文賞(2回)、電気通信普及財団賞、紀伊國屋じんぶん大賞を受賞。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)、『ネット炎上の研究』(勁草書房)などがある。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学兼任講師、日本リスクコミュニケーション協会理事、シエンプレ株式会社顧問、クリエイターエコノミー協会アドバイザー、総務省・厚労省の検討会委員などを務める。
■コメント
二次流通市場での化粧品/コスメの取引が増加しており、「メルカリ」における化粧品/コスメの購入数も2014年~2020年の7年間で約12.4倍にも拡大しています。※4また、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、店頭でサンプルやテスターを試すことが出来なくなり、通販で安くお試し購入できる二次流通の重要性が高まっていると推測されます。他方、二次流通市場が拡大することは、人々の新品消費を代替してしまい、一次流通市場にマイナスの影響があることも懸念されるでしょう。
本調査研究は、そのような化粧品/コスメの二次流通市場の実態と、一次流通市場に与える影響について、2万人を対象としたアンケート調査から分析したものとなります。分析の結果分かったのは、二次流通市場規模が1,555億円に達すること、そして、二次流通市場が一次流通市場を代替するどころか、むしろ205億円の消費喚起効果を持っていることでした。
特に興味深かったことは、消費喚起効果の内訳をみると、二次流通での購入による消費喚起効果が52億円、出品による消費喚起効果が153億円となっている点です。調査範囲は異なりますが、2020年調査(アンケートは2019年12月に実施)※5では「購入」行動はマイナスの影響を与えていたので、それが2年弱でプラスに転じたといえます。つまり、これまで代替関係にあったものが、二次流通市場が成長する中で、むしろ一次流通市場を拡大するようになったといえます。
このようなプラスの効果は意外に感じるかもしれませんが、実は消費者自身も、二次流通の利用で新品での購入が増えたと感じていることが分かっています。また、新品購入金額は、二次流通購入者の方が二次流通非購入者よりもはるかに高いことも分かっています。化粧品/コスメのヘビーユーザーが、二次流通で色々試したり出品したりする中で、より一層新品で購入するようになっている正のサイクルが浮かび上がってきます。
また、使ったことのない商品をお試しで購入する「トライアル消費」を、二次流通市場利用者の40%が経験しています。さらに、現在二次流通市場で購入していない人の20.4%が、今後半年以内にトライアル消費をしてみたいと回答しています。二次流通市場自体が今後拡大することで、トライアル消費も増えていき、新品市場にもよりポジティブな影響があるでしょう。
※4:下記、参考情報2参照
※5:株式会社メルカリ プレスリリース「メルカリ、フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果の実態調査を発表」(2020年2月)https://about.mercari.com/press/news/articles/20200213_consumer_survey/
調査結果詳細
本調査における化粧品/コスメの定義
本調査では、フリマアプリ「メルカリ」上の商品カテゴリーである「ベースメイク」「メイクアップ」「スキンケア/基礎化粧品」「ネイルケア」「香水」「ヘアケア」「ボディケア」の計7カテゴリーを化粧品/コスメと定義しています。詳細については、以下をご参照ください。
■ベースメイク
ファンデーション、化粧下地、コンシーラー、フェイスパウダーなど
■メイクアップ
口紅、リップクリーム、アイライナー、つけまつげなど
■スキンケア/基礎化粧品
化粧水、乳液、洗顔料、パック、シェービングフォームなど
■ネイルケア
ネイルカラー、ネイルアート用品、付け爪、除光液など
■香水
香水、オーデコロン、ボディミストなど
■ヘアケア
シャンプー、トリートメント、スタイリング剤、カラーリング剤など
■ボディケア
ハンドクリーム、日焼け止め、制汗・デオドラント、入浴剤など
1.国内在住15歳~69歳のうち10.0%が二次流通市場で化粧品/コスメの購入を経験、二次流通市場規模は推計1,555億円
国内在住の15歳~69歳/男女の性年代人口比に割り付けた20,000人を対象に、直近6ヶ月間で、化粧品/コスメに該当する商品をフリマアプリやオークションサイトなどの二次流通市場で購入したことがあるかを調査したところ、10.0%が二次流通市場で化粧品/コスメを購入していることがわかりました。
直近6ヶ月間における、二次流通市場での化粧品/コスメの購入金額から一人当たりの平均購入金額を算出し、15歳~69歳の男女の人口と掛け合わせ、国内の化粧品/コスメ二次流通市場規模を推計したところ、年間1,555億円であることがわかりました。
2.二次流通市場購入者の40.1%が、使ったことがない化粧品を試すための“トライアル消費”を実施。二次流通市場規模1,555億円のうち、275億円がトライアル消費
直近6ヶ月間において、二次流通市場で化粧品/コスメの購入を経験した(以下、「二次流通購入者」)1,500人を対象に、使用したことがない商品のお試しを主目的とする二次流通市場での購入(以下、「トライアル消費」)がどの程度の割合で行われているかを調査したところ、二次流通購入者の40.1%が、トライアル消費を行っていることがわかりました。
また、トライアル消費の総額を推計したところ、年間275億円であることがわかりました。
3.トライアル消費を行う理由1位「店頭や通販サイトなどで新品で買って失敗したくなかったため」2位「通販で買うことが多く、購入前に試したかったため」3位「新型コロナの影響で化粧品・コスメを通販で買うようになり、店頭で試せなくなったため」
トライアル消費実施者を対象に、トライアル消費を行う理由を調査したところ、以下のような結果となりました。
4.二次流通市場がもたらす一次流通市場への消費喚起効果は年間205億円、二次流通市場での「購入」による消費喚起効果は年間52億円、「出品」による消費喚起効果は153億円
分析モデル※6を用いて、二次流通市場の利用による一次流通市場への消費喚起効果を推計したところ、二次流通市場の「購入」利用による消費喚起効果が年間52億円、「出品」利用による消費喚起効果が年間153億円となり、合わせて年間205億円の消費喚起効果が生まれることがわかりました。
※6:下記、参考情報1参照
5.二次流通購入者/非購入者における化粧品/コスメの消費意識の差、1位「新しい商品はできるだけ試す」
二次流通購入者及び二次流通非購入者を対象に、化粧品/コスメに関する消費意識を調査したところ、両者の消費意識差TOP3は、1位「新しい商品はできるだけ試す」(28.3%差)、2位「普段から化粧品/コスメの情報を収集する」(25.9%差)、3位「高価な化粧品/コスメをよく買う」(24.2%差)となりました。
6.直近6ヶ月間における一次流通市場での平均購入金額は、トライアル消費実施者が最も高い24,206円で、 二次流通非購入者の約2.6倍
直近6ヶ月間における、化粧品/コスメの平均購入金額を調査したところ、二次流通市場を活用し化粧品/コスメのトライアル消費を行っている人(以下、「トライアル消費実施者」)の一次流通市場での平均購入金額は24,206円、二次流通市場での平均購入金額は12,906円となり、合計37,112円であることがわかりました。
二次流通購入者では、一次流通市場での平均購入金額が18,882円、二次流通での平均購入金額が9,497円なり、合計28,379円。二次流通市場を活用していない人(以下、「二次流通非購入者」)では、一次流通市場での平均購入金額が9,207円となりました。
一次流通市場だけでの平均購入金額を比較すると、トライアル消費者が最も高く、二次流通非購入者の約2.6倍になることが明らかになりました。
■参考情報
1:消費喚起効果の分析モデル
二次流通市場利用者の新品購入金額に影響をおよぼす要素が「二次流通市場での購入金額」「二次流通市場での出品金額」「年収などの属性」「化粧品/コスメ分野に対する好み」の4要素であるとし、操作変数法で回帰分析をすることでフリマアプリ利用者の新品購入金額の変化を推計しました。
2:「メルカリ」における化粧品/コスメ取引
2014年と2020年を比較し、化粧品/コスメ年間購入数は12.4倍
2020年における40代以上の購入者は47.0%、サービス開始時と比較し増加傾向