気候変動の影響等のESGの観点は、執行役会の重要アジェンダの1つとして十分な議論の時間を定期的に確保し、経営の意思決定及び業務の執行プロセスに組み込む体制を構築しています。マテリアリティごとの進捗状況のモニタリングは、事業計画の進捗と併せて執行役会にて四半期ごとに行われ、取締役会へ報告されます。本体制とプロセスを通じて、ESG推進を行ってまいります。
メルカリグループ全体を対象として、気候変動に関連する「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を特定するためにシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき2つのシナリオ(1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオ)を設定し、メルカリグループの2030年以降の社会を考察しています。シナリオ分析に基づく、気候変動に関連する主なリスクと機会は以下の通りです。
区分
気候変動がメルカリグループに及ぼす影響
顕在時期
事業インパクト
当社の対応策
リスク
物理的リスク
急性
自然災害の激甚化によるデータセンター等のダウン
自然災害の激甚化により、データセンターや電力会社が被災した場合、電気及びネットワークの中断、データーセンターのダウン等を引き起こし、顧客(売り手・買い手)がオンラインで販売及び購入できなくなる中~長期
中
・操業停止期間を減少させるBCPの構築
・災害復旧計画の検討
移行リスク
政策・法規制
各種規制や燃料価格上昇による商品の配送コストの増加
カーボンプライシングの導入、燃料価格上昇、クリーエネルギー規制や、燃費規制、配送人件費の増加等による商品の配送コストの増加は、顧客(売り手・買い手)に影響を与え、マーケットプレイスで販売される商品の需要に影響する中~長期
小
・サプライヤーエンゲージメントの強化
・環境負荷の少ない配送手段の拡大
移行リスク
評判
気候変動対応が不十分なことによる金融機関・投資家からの評判低下下
投資家や金融機関から気候変動関連の対応や情報開示への要請が高まる中、暗号資産事業や越境取引の拡大等に対して対応が不十分であった場合、資金調達への影響が想定される中~長期
中
・情報開示の充実化
・2030年までのScope1+2 100%削減
・Scope 3における削減(SBT認定取得)
・配送事業者等とのサプライヤーエンゲージメントの強化
・暗号資産事業の取引規模に応じたカーボン・オフセットの実施
物理的リスク
慢性
温暖化による冬物衣料の需要低下
温暖化により、マーケットプレイスで販売される冬物衣料の需要が低下することで売上に影響する中~長期
中
・他カテゴリーの需要強化
・越境取引、BtoC取引等市場の拡大
機会
評判
環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化
サステナブルな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出短~中期
大
・「捨てるをへらす」サステナブルな消費者行動の促進
メルカリグループでは、グループの事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスクと機会は、ESG委員会含むサステナビリティ推進体制において管理しています。案件に応じて、取締役会に報告・提言を行うフローも構築されています。
また、コンプライアンス・リスク管理委員会において、全社での重要リスクを特定しリスク管理を実施しており、気候変動リスクについても事業へ重大な影響を及ぼすリスクに対しての対応課題の検討および優先度の決定を行い対応方針を定めています。
事業を通じて排出するGHGのFY23.6以降の排出量算定結果について、弊社が影響を与える影響度を踏まえ、新たにScope3カテゴリー9(下流の輸送・流通)を算定対象に含めるなど算定範囲を拡大しました。算定範囲の見直しの結果、削減目標についても一部変更しています。
変更前)
Scope1+2:2021年を基準年とし、2030年までに100%削減
Scope3:2021年を基準年とし、2030年までに付加価値あたりの排出量(原単位)51.6%削減(カテゴリー1が対象)
変更後)
Scope1+2:2021年を基準年とし、2030年までに100%削減
Scope3:2023年を基準年とし、2030年までに付加価値あたりの排出量(原単位)51.6%削減(カテゴリー9が対象)
Scope1 | 353トン |
Scope2 | 0トン |
Scope3 | 287,759トン |
合計 | 288,112トン |