〜人文社会科学系の研究者を受け入れ、新興技術を社会実装するためのELSIへの取り組みを強化〜
株式会社メルカリ(以下、メルカリ)の研究開発組織 「mercari R4D(アールフォーディー)」(以下、R4D)は2023年8月1日より、大阪大学社会技術共創研究センター(以下、大阪大学ELSIセンター)と、クロス・アポイントメント協定を締結し、産学のコミュニティを超えた組織間の人材交流(以下、本取り組み)を開始することをお知らせいたします。本取り組みは、産学での深い交流を通じて、ELSI(倫理的・法的・社会的課題/Ethical, Legal and Social Issues(エルシー))研究のさらなる強化を目指しており、8月より大阪大学ELSIセンターに在籍する研究者1名がメルカリでの業務に従事いたします。
R4DのELSI研究について
昨今、生成AIやLLM(大規模言語モデル)、量子情報技術に代表されるような革新的な新興技術の登場を受け、社会全体で新興技術の社会実装に伴うさまざまな倫理的・法的・社会的課題(ELSI)と向き合う必要性が高まっています。特にこうした新興技術を積極的に取り入れてビジネスを行うIT・テック業界では、新興技術を社会実装する際に生じうる、技術そのもの以外の課題を多角的な視点から予見し、解決策を検討する責任が求められます。
R4Dと大阪大学ELSIセンターは、2021年よりELSIに関する共同研究を進めており※1、メルカリにおける研究開発倫理審査の高度化※2や新たな技術に対するテクノロジーアセスメントを行ってまいりました。
今後、さらなるイノベーションの創出に向けて、企業のELSIへの取り組みはますます重要となっていくことが予想されることから、この度、クロス・アポイントメント協定を締結し、大阪大学ELSIセンターとの人材交流を開始することで、コミュニティの枠を超えた検討を強化し、新興技術を社会実装する際のELSIへの取り組みを強化していきます。
大阪大学ELSIセンターとの人材交流開始の背景
イノベーション創出には、高い専門性を持つ人材がアカデミアと企業の橋渡しをするなど、異なるコミュニティ間で人や知が柔軟に行き来するエコシステムの活性化が求められます。
R4Dは産業界やアカデミア、国といったコミュニティの枠を超えて、新たな価値を切り拓くCo-Innovation的アプローチを設立当初から推進してまいりました。特に産学での柔軟な人材流動を実現する枠組みとして、これまでも大学に所属しながらメルカリに雇用されるという研究者の新しい働き方を積極的に提唱してきました。東京大学大学院工学系研究科教授でありながら、R4DのHead of Research(所長)である川原圭博をはじめ、複数のR4Dのメンバーがこの枠組みを活用してR4Dで研究を推進しています。
本取り組みでは、これまでの枠組みをさらに発展させ、人文社会科学系の分野にターゲットを拡大し、研究者が大学に在籍しながら企業の現場における実践知を得られる環境を整えることで、人文社会科学系の研究者の新たな働き方のロールモデルを模索していきます。
今回、まず8月より大阪大学ELSIセンターに在籍する研究者1名を受け入れ、一定の割合でメルカリの業務に従事いたします。これにより、メルカリ社内の研究開発現場や多様な専門家・実務家との意見交換が可能になります。また今後は本取り組みをさらに発展させて、メルカリ社員が大学に出向するような枠組みも検討してまいります。
メルカリは、今後も産学の枠を超えた組織間の人材交流に積極的に取り組んでいくとともに、イノベーションエコシステムの活性化に向けて、研究者の新しい働き方や、新たな活躍の場の可能性を切り拓いてまいります。
※1:メルカリと大阪大学ELSIセンターが共同研究を開始
https://about.mercari.com/press/news/articles/20201218_elsi/
※2:メルカリ、大阪大学ELSIセンターとの共同研究に基づき策定した独自の研究開発倫理指針を公開
https://about.mercari.com/press/news/articles/20210630_elsi/
mercari R4Dについて
「mercari R4D」は2017年12月に設立した、社会実装を目的とした研究開発組織です。「まだ見ぬ価値を切り拓く」というミッションのもと、メルカリが目指す限りある資源を循環させ、あらゆる人が可能性を発揮できる社会の実現に向けて、産業界やアカデミア、国といった枠を超えてコミュニティをつなぎ、科学技術の力で複雑な社会課題を解決するCo-Innovation的アプローチを推進しています。
ウェブサイト:https://r4d.mercari.com/