【対談】リユースを「エンタメ」へ。9メートルの巨大サイネージで可視化した、個人の行動がつくる持続可能な未来

株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は、2025年11月28日(金)から11月30日(日)の3日間、服のリユース・リペアを活用したサステナブルファッションの楽しみ方を提案する、「メルカリ グリーンフライデープロジェクト2025 〜リユースファッションパーク〜」をニュウマン高輪 South 2F ”+Base 1″にて開催しました。

大量生産・大量消費の象徴とも言われるブラックフライデーに対し、モノを大切に使い続ける文化を提案する「グリーンフライデー」。2025年の目玉は、個人のリユース行動による環境貢献度をリアルタイムで可視化する「GREEN SIGNAL(グリーンシグナル)」という取り組みでした。

本記事では、ポッドキャスト番組「サーキュラーエコノミー総研ラジオ」での対談をもとに、今回のプロジェクトオーナーである上村一斗と、研究開発組織「メルカリR4D」でアウトリーチを担当する三川夏代に、その舞台裏とリユースの未来について語っていただきました。

https://open.spotify.com/episode/4ztiaNBNuq1qi4SF8HQwJu?si=Zg3p0yCLTDCE5IIAmFGWFg

 

「リユースパーク」が提案する、新しい循環の形

―まずは上村さんから、今年のグリーンフライデープロジェクトの全体像について教えてください。

昨年は11月28日から30日の3日間、ニュウマン高輪を舞台に「リユースパーク」というコンセプトでイベントを開催しました。メルカリのグリーンフライデーは2020年から続いており、今年で6年目になります。

ブラックフライデーは一般的に、大規模なセールが行われる日として知られています。これに対し、欧州などで始まったのが「モノを大切に長く使い、地球環境に優しい持続可能な消費を啓発する」というグリーンフライデーのカルチャーです。メルカリは日本における先駆者の1つとして、このメッセージを発信し続けてきました。

例年はファッションショーなどのイベント形式が多かったのですが、今年はより「一般のお客さまの行動変容」にフォーカスしました。難しい理屈抜きに、リユースを楽しみ、身近に感じてもらうための仕掛けを詰め込み、「サステナブルファッションを楽しむあらゆる選択肢」を体験できるよう設計しました。

  • 物々交換ブース「Bring One Get One Free」: 自分が持ってきた服一着を、会場にある服一着と交換できる体験。
  • BAYCREW`S REUSE SHOP by CIRCULABLE SUPLLY: ベイクルーズ様がセレクトしたリユース服の販売。
  • 修理・リメイクの実例展示&相談ブース by リフォームスタジオ: お気に入りの服やカバンの修理相談ブース。
  • 捨てずに次の人へ「循環アクション」ブース by 宅配PASSSTO: 「捨てる」以外の選択肢としての回収サービスの紹介。
  • AIと楽しむリユースファッション発見ラボ by メルカリR4Dラボ: AIとのやり取りを通じて、自分に合ったリユースアイデアをマンガ形式で持ち帰れるブース。

これらを通じて、来場者がアクションを起こし、そのインパクトを共有できる場を作りました。

詳しくはこちらのイベントレポートもご覧ください。

 

アートが橋渡しをする「研究」と「日常」

―会場で最も目を引いたのが、巨大なサイネージに映し出される「GREEN SIGNAL」でした。三川さん、この取り組みの狙いを教えてください。

「GREEN SIGNAL」は、会場で行われたリユース行動によって生まれたCO2削減貢献量を、1時間ごとに知らせる「時報」のプロジェクトです。ニュウマン高輪の入り口にある、横幅9メートルの巨大サイネージを活用しました。

お客さまが物々交換に参加したり、リユース服を購入したりすると、スタッフがその素材や色をデータ入力します。すると、リアルタイムでサイネージ上に「デジタル上の糸」が生成され、参加者のニックネームと共に表示される仕組みです。

自分のニックネームが表示された瞬間を写真に収めるお客さまも多くいらっしゃいました。また、取引された服の色に応じてサイネージ背景のグラフィックが変化するようにしており、例えば赤い服の取引が続くと画面が華やかになり、黒や青が多いとシックな雰囲気になるなど、常に変化し続ける「生きているアート」として設計しました。

研究開発組織「R4D」としては、本来説明が難解になりがちな算出ロジック研究を、アートというエンターテインメントを介して伝えることで、自分事として楽しんでもらえた手応えがありました。

 

「CO2削減貢献量」を算出する、メルカリ独自のロジック

―サイネージに表示される数字の裏側には、どのようなロジックがあるのでしょうか。また、3日間でどの程度のインパクトが生まれたのでしょうか?

私たちR4D(研究開発組織)が研究している「ポジティブインパクト」の算出ロジックをベースにしています 。これはメルカリが毎年発行している「インパクトレポート」のロジックを、本イベント用に簡略化したものです。

基本は「新品を購入した場合」と「リユース品を購入した場合」のCO2排出量の差分を算出することです。 ここで重要なのが、メルカリ独自の概念である「新品置き換え率」です。リユース品を買ったことで本当に新品の購入を抑制できたのか、それともリユース品も新品も両方買ってしまったのか。後者のケースを無視すると、削減効果を過大に見積もってしまいます。この「新品置き換え率」を加味することで、より正確な環境貢献量を算出しています。

3日間で約7.6トンのCO2相当量の削減に貢献できました。これは、樹齢00年の杉の木約860本分が1年間に吸収する量に相当します。個人の小さな行動の積み重ねが、わずか数日でこれほど大きなインパクトを生んだのです。これは、私たちにとっても大きな発見でした。

大変なこともたくさんありましたが、1時間ごとの「時報」の瞬間に、会場にいるスタッフもお客さまも足を止めてサイネージを見上げ、ニックネームが流れるエンドロールを映画のように笑顔で眺める光景を見たとき、すべてが報われた気がしました。

 

パートナーと共に挑む「文化祭」のような熱量

―これほど大規模なプロジェクトを成功させるには、多くの苦労があったのではないですか?

このプロジェクトは、メルカリ一社では決して実現できません。アパレル企業や自治体など、多くのパートナー様との連携が不可欠です。しかし、パートナー様にとってブラックフライデーは大きな商戦期。そのタイミングで「モノを大切に」という逆説的なメッセージを発信するのは、社内調整を含め非常にハードルの高いことでした。

開催1ヶ月を切ったタイミングでまだ決まっていないことも多かったのですが、プロジェクトチーム一丸となって、「お客さまにどうわかりやすく伝えるか」を徹底的にこだわり抜きました。

その苦労があったからこそ、1時間ごとの「時報」の瞬間に、会場にいる全員が足を止めてサイネージを見上げ、笑顔になる光景を作ることができたのだと思います。

印象的だったのは、ベイクルーズ様のブースで服を買おうか悩んでいた女性のお客さまです。一度会場を出てから戻って購入されたのですが、その直後にサイネージをじっと見つめていらっしゃいました。お話を伺うと、ご家族が温室効果ガスの研究をされているそうで、自分の買い物が具体的にどう社会に貢献したのか、そのロジックを深く理解しようとされていたんです。こうしたお客さまの反応にも報われました。

 

未来への展望:可視化を日常へ、そしてエンタメへ

―今回の成功を受けて、今後の展望について三川さんから教えてください。

今回確立した「CO2削減貢献量の可視化スキーム」を、イベントという枠を超えて広げていきたいと考えています。例えば、「メルカリ」のアプリ本体への実装や、自治体・学校と連携した教育プログラムへの活用など、可能性は無限大です。地域ごとにリユースの輪を広げるような、共創の仕組みが作れたら面白いですよね。

アートやエンタメという表現を通じて、リユースが持つ大きな可能性を感じていただけたら嬉しいです。これからも研究と広報を掛け合わせ、個人の行動が未来をつくる一助となっていきます。

リユースは、一人ひとりが今日から始められる、最も身近な環境アクションです。その一歩がどれだけのインパクトを持っているか、これからも技術とアートの力で伝えていきたいと思います。

 

―次年度のグリーンフライデーに向けて上村さんからもコメントをいただければ。

今回のプロジェクトを通じて、パートナー様から「メルカリさんならサステナビリティをエンタメ化できるはず」という言葉をいただきました。 「いいことだからやる」のではなく「楽しいからやる」。その結果として社会が良くなっている。そんな世界観をもっと多くの場所に広げていきたいです。すでに来年に向けた新しいお声がけもいただいています。

グリーンフライデーの輪を、もっと大きく、もっと楽しくしていきます。来年はさらにパワーアップした仕掛けを用意しますので、ぜひ楽しみにしていてください。

 

編集後記: 「7.6トン」というこれまでは無機質な数字だったものが、ニュウマン高輪で、誰かの「大切にしていた服」と「誰かのこれからのお気に入り」が入れ替わる瞬間が可視化されたことで、人々の心を動かす物語へと変わりました。 メルカリが挑む「サステナビリティのエンタメ化」は、まだ始まったばかりです。サーキュラーエコノミー総研では、こうしたストーリーについてもお伝えしていければと思います。

(執筆:高橋亮平)

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