2020.2.13
プレスリリース

メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表

フリマアプリ利用による、新品商品の消費喚起効果は年間約484億円

〜フリマアプリで最も流通量が多いファッションは年間約288億円の消費喚起効果〜

メルカリ総合研究所(運営:株式会社メルカリ)は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師の山口真一氏と、全国の15~69歳を対象に「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態に関する共同調査を実施しました。

2019年5月に経済産業省がまとめた調査※1によると、2018年のフリマアプリ推定市場規模は6,392億円(前年比32.2%増)と調査開始以来3年連続で成長しており、二次流通市場の拡大は一次流通市場の消費を減少させているという可能性が指摘されています。例えば、国内アパレルの総小売市場規模は2018年に9兆2239億円(前年比0.1%増)と微増したものの、年々漸減傾向※2にあり、フリマアプリ市場の勃興を起点とした二次流通の拡大によって、新品の購入を代替しているという声もあがっています。一方で、売却を前提とした購入行動をしているフリマアプリ利用者が存在し、一次流通市場での購入意欲を刺激している可能性もあるため、その新たな消費行動に注目する企業も出てきています。

そこで、メルカリ総合研究所は、フリマアプリ利用が新品商品の消費を喚起しうるのか、その実態を明らかにすべく、フリマアプリでの取引件数が多い「ファッション」「スポーツ・レジャー」「理髪料・コスメ」「家電・スマホ」「エンタメグッズ」「おもちゃ・ホビー」の6カテゴリーを対象に15歳~69歳の男女20,000人を対象に調査を実施しました。

※1:出典「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
   (経済産業省)https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html
※2:出典「2019 アパレル産業白書」(株式会社矢野経済研究所)
   https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2276

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【結果サマリー】
1)フリマアプリ「出品」経験者は全てのカテゴリー(「ファッション」「スポーツ・レジャー」「理髪料・コスメ」「家電・スマホ」「エンタメグッズ」「おもちゃ・ホビー」)で、ひと月あたりの新品購入金額が増加、「購入」経験者は3カテゴリー(「理髪料・コスメなど」「家電・スマホなど」「おもちゃ・ホビーなど」)で、ひと月あたりの新品購入金額が減少

2)フリマアプリ利用による新品商品の消費喚起効果は年間484億円

3)フリマアプリ利用者、意識調査でも「エンタメグッズ」を除く6カテゴリー中5カテゴリーで新品購入金額が増加

4)フリマアプリ「出品」経験者、新品購入金額が増える理由は「売ってお金を得られるので購入頻度/単価が高くなるから」「売れば、もし自分に合わなくても捨てなくて済むから」

5)フリマアプリ「購入」経験者、新品購入金額が増える理由は「フリマアプリで節約することで、新品での購入頻度/単価が高くなるから」「検索で新しい商品に出会い、それを新品で買うことがあるから」「フリマアプリで試して、その後新品で買うようになることがあるから」

6)フリマアプリで商品を検索することで、全てのカテゴリーで60%以上が「新品購入金額が増えたと思う」と回答
※本調査におけるフリマアプリ「出品」経験者、「購入」経験者、フリマアプリ利用者は3か月以内にフリマアプリを利用し、「購入」又は「出品」、「購入と出品の両方」を経験した人。

【調査概要】
調査1:フリマアプリ利用者・非利用者を含む20,000人に対する調査
<サマリー・調査詳細1~2>
調査時期:2019年12月~2020年1月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国、15歳~69歳の男女20,000人
留意事項:15歳~69歳の各性年代別インターネット利用者比に応じた割り付けに従って取得

調査2:20,000人への調査のうち、フリマアプリ利用者1,500人への意識調査
<サマリー・調査詳細3~6>
調査時期:2019年12月~2020年1月
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国、15歳~69歳の男女1,500人
留意事項:直近3ヶ月以内にフリマアプリを利用かつ、15歳~69歳の各性年代別のインターネット利用者比に応じた割り付けに従って取得

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【調査コメント:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師 山口真一氏】
■プロフィール

2010年慶應義塾大学経済学部卒。2015年同大学経済学研究科で博士号(経済学)を取得し、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教を経て、2016年より国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師。他に、東洋英和女学院大学兼任講師、グリー株式会社アドバイザリーボードも務める。専門は計量経済学・統計学。研究分野は、ネットメディア論、フリー・ビジネス、プラットフォーム戦略、データ利活用戦略など。情報社会で生まれた諸課題について、エビデンスをベースに政策的・ビジネス的含意を導くことを主なフィールドにしている。
「あさイチ」「ニュースウォッチ9」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。組織学会高宮賞受賞(2017年)、情報通信学会論文賞受賞(2017年・2018年)、電気通信普及財団賞受賞(2018年)。主な著作に『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)、『ネット炎上の研究』(勁草書房)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(勁草書房)などがある。主に所属している学会は、情報通信学会、組織学会、日本経済学会、社会情報学会、日本マーケティング学会など。2019年より情報通信学会編集委員。

■コメント
フリマアプリ市場は2018年に6,392億円に達し、成長を続けています。その背景には、技術革新によってCtoCで取引することが容易になったことだけでなく、消費者の価値観の変化があります。つまり、情報社会になり、大量消費・大量生産時代が収束に向かいつつあるなか、つながりや環境への配慮を重視するようになってきており、そのような価値観の変化とフリマアプリは親和性が高いといえます。

しかし、フリマアプリについては、シェアすることによって新品の消費を代替するために、経済にマイナスの影響があると指摘する声もあります。他方、私が以前行った若者へのインタビューでは、「出品を前提にむしろ新品で買う頻度が増えた」などの補完効果を指摘する声も多く聞かれました。

そのような、フリマアプリが新品市場に与える影響を分析したのが本調査となります。そして、15~69歳の男女20,000人のデータを使った定量分析では、「ファッション」などの主要6カテゴリー全てにおいて、「フリマアプリで出品することによって新品購入金額が増加する」という消費喚起効果が見られました。フリマアプリで購入することによる代替効果も3カテゴリーで見られましたが、総合的に見ると、フリマアプリの利用によって年間500億円弱もの消費喚起効果があると結論付けられました。

これほど消費喚起効果があるという結果は、率直にいって、分析した私にとっても「意外」なものでした。しかしながら、フリマアプリ利用者の主観的な評価でも「フリマアプリ利用で新品購入金額が増えた」と考えている人は「減った」と考えている人よりも多く、利用者自身もこの喚起効果を認識しているといえます。なお、「家電・スマホ」カテゴリーでは代替効果が大きく出ていますが、メルカリ内の取引データでも当該カテゴリにおけるスマホの取引量は、スマホはPC/タブレットに次いで多く、スマートフォンの新品単価が高く、フリマアプリではかなりお得に買えることがその要因と考えられます。

いずれにせよ、これからのビジネスにおいては、フリマアプリのような中古市場との連携を意識して上手く活用することが、逆にチャンスになることを本研究結果は示しています。つまり、フリマアプリで出品されやすいかどうか、検索されやすいかどうか、受けやすいかどうかなどを考慮して商品を開発することが、結果的に新品の売り上げを伸ばすことに繋がるといえます。

今後もフリマアプリだけではなく、様々な形で中長期的にシェアリングエコノミーは進んでいくと考えられます。なぜならば、その根底には冒頭で述べたような価値観の変化があり、新しい情報社会のスタンダードになっていくなるためです。時代にあった製品開発、サービス設計が今後さらに求められていくでしょう。

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フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果の実態調査 調査結果詳細

1)フリマアプリ「出品」経験者は全てのカテゴリーで新品購入金額が増加、「購入」経験者は3カテゴリーで新品購入金額が減少
フリマアプリ利用者の新品購入金額の変化を推計すると、フリマアプリで「出品」を経験している場合、6カテゴリー全てにおいて、新品購入金額が増加する効果が見られました。その一方で、フリマアプリで「購入」を経験している場合、「理髪料・コスメなど」「家電・スマホなど」「おもちゃ・ホビーなど」の3カテゴリーでは、フリマアプリでの「購入」経験によって新品購入金額が減少する効果が見られました。

2)フリマアプリ利用による新品商品の消費喚起効果は年間484億円
調査結果1を用いて、1年間分の新品商品の消費喚起効果を推計すると、年間約484億円であることがわかりました。

※推計の計算式は以下。
{(各カテゴリーの購入経験者一人あたりの新品購入金額の月別変化量×カテゴリー別フリマアプリ購入経験者率×日本のネットユーザー数)+(各カテゴリーの出品経験者一人あたりの新品購入金額の月別変化量×カテゴリー別フリマアプリ出品経験者率×日本のネットユーザー数)}×12=フリマアプリ利用による新品商品の消費喚起効果(年間)

以下、20,000人への調査のうち、フリマアプリ利用者1,500人への意識調査

3)フリマアプリ利用者、6カテゴリー中5カテゴリーで新品購入金額が増加
フリマアプリ利用者1,500人に、フリマアプリを利用することで新品購入額が増減したかを定性的に評価してもらうと、6カテゴリー中5カテゴリーで「新品購入金額が増えた」と感じている人が多いという結果になりました。サマリー1~2の金額での分析結果と、消費者の主観的な評価はおおむね整合性が取れていることがわかりました。

4)フリマアプリ「出品」経験者、新品購入金額が増える理由は「売ってお金を得られるので購入頻度/単価が高くなるから」「売れば、もし自分に合わなくても捨てなくて済むから」
フリマアプリで出品経験があり、新品購入金額が増加したと回答した人を対象に増えた理由を調査し、最も多い回答が「売ってお金を得られるので、購入頻度が増えたから」44.0%でした。一方で、「売却できるから新品購入ハードルが下がる」という意見もあることがわかりました。

5)フリマアプリ「購入」経験者、新品購入金額が増える理由は「フリマアプリで節約することで、新品での購入頻度/単価が高くなるから」「検索で新しい商品に出会い、それを新品で買うことがあるから」「フリマアプリで試して、その後新品で買うようになることがあるから」
フリマアプリで「購入」経験があり、新品購入金額が増加したと回答した人を対象に増えた理由を調査し、最も多い回答が「フリマアプリで節約することにより、新品購入頻度がむしろ増えたから」44.5%でした。一方で、「フリマアプリで試すことにより、新品購入ハードルが下がる」という意見もあることがわかりました。

6)フリマアプリで商品を検索するだけでも、60%以上の人が新品購入金額が「増えたと思う」と回答
フリマアプリ利用者に「検索」、もしくは「試用」することによって、その商品・ブランドを新品で購入した経験があるかを調査すると、6カテゴリー全てで「検索」をすると60%以上、「試用」すると70%以上が新品購入金額が増えたという結果になりました。

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以下、参考資料
本調査における仮説
仮説として、フリマアプリで「購入」経験があると一次流通における消費を減少させ、「出品」経験があると一定の収益を得ることで、一次流通における消費を増加させるとした場合、フリマアプリ「購入」経験者は「非購入」経験者に比べ、新品購入金額が減少することが想定されます。そこで、15~69歳の男女20,000人を対象とした調査を実施しました。その結果、「家電・スマホ」などを除く5カテゴリーにおいてフリマアプリ「購入」経験者のほうが新品購入金額が高い結果となりました。
・ファッション :「購入」経験あり20,912円、なし13,183円
・スポーツ・レジャー :「購入」経験あり19,294円、なし10,142円
・理髪料・コスメなど :「購入」経験あり18,242円、なし6,529円
・家電・スマホなど :「購入」経験あり28,278円、なし29,736円
・エンタメグッズ :「購入」経験あり15,955円、なし7,806円
・おもちゃ・ホビーなど :「購入」経験あり16,116円、なし9,429円

仮説どおりであれば、フリマアプリでの「購入」経験があると新品購入金額は減少しますが、調査結果ではフリマアプリで「購入」経験がある人は、新品購入金額も増加する傾向にあります。しかし、上記結果は「ファッションが好きな人は新品購入金額も、フリマアプリ購入金額も増加する」といった内生性問題であると考えられるので、選好を調整したうえで、操作変数法で「フリマアプリでの行動が新品購入金額に与える影響」を抽出します。
※内生性問題とは、主に経済学で使用される用語。分析に当たって、説明変数と誤差項(モデルに含まれていないが被説明変数であるに影響を与える要素)が相関しており、正しく推定できないことを指す。今回のケースでは、被説明変数である「新品購入金額」について、モデルに含まれていない「消費者の詳細な嗜好」と説明変数である「フリマアプリでの購入金額」が正の相関をしているため、そのまま分析すると得られる結果は過大推定となってしまう。

分析モデル
フリマアプリ利用者の新品購入金額に影響をおよぼす要素が「フリマアプリでの購入金額」「フリマアプリでの出品金額」「年収などの属性」「当該分野に対する好み」の4要素であると解釈した場合、以下の分析モデルをつくることができ、操作変数法※1で回帰分析※2をすることでフリマアプリ利用者の新品購入金額の変化を推計※3します。

※1:操作変数法とは、統計学、計量経済学、疫学、また関連分野において統制された実験が出来ない時、もしくは処置がランダムに割り当てられない時に、因果関係を推定するための方法。
※2:回帰分析とは、結果となる数値と要因となる数値の関係を調べ、それぞれの関係を明らかにする統計的手法。
※3:推計の対象となる各金額は「過去3か月以内のひと月当たりの平均金額」を用いる。そのため、3か月以内に新品購入もフリマアプリでの購入もない人は、その3か月間の顧客ではなかったとして分析から除外。

■メルカリ総合研究所について
メルカリ総合研究所は、外部有識者とともに、フリマアプリの社会的影響から二次流通市場の可能性、その先にある循環型社会が未来にどのような影響をもたらすかを研究する組織です。社会・次世代消費・生活など、さまざまな視点から研究を行い、生活者の意識や行動の変化、次世代の「豊かさ」について新たな視点を見出していくための活動を行っています。
https://pj.mercari.com/souken/